【発酵文化から学ぶvol.2】こんなにあった!知られざる世界の発酵食

こんにちは!はすやです。

今回のテーマはズバリ「発酵食」。発酵食といえば、お味噌や納豆、ぬか漬けなど日本食のイメージが強いですが、世界を見渡してみると驚くほどたくさんの発酵食が存在しています。

よく知られているのは、野菜を発酵させて作るピクルスや果実酢のバルサミコ酢などでしょうか。すでに日本で親しまれているものもあれば、ほとんど知られていないものもあったりと、世界の発酵食文化はなかなか奥深いようです。

そこで今回は、海外の発酵文化を一緒に楽しみましょう!

世界最古の発酵食はお酒だった!?

私たちにとって身近な存在である発酵食ですが、その起源ははっきりと分かっておらず、諸説あるようです。現時点で考古学的に確認されている最古の発酵食は、約8000年前のコーカサス地方で発見された「ワイン」だと言われています。約8000年前といえば、日本は縄文時代!そう考えると、発酵食はとてつもなく古い歴史を持っていることが分かります。

ちなみに、日本最古の発酵食品は約4000年前の「魚醤」なんだそう。同じ発酵食といっても、お酒だったり調味料だったりと特徴は実にさまざま。国や地域の風土や気候、収穫できるもの、食習慣などが大きく関係して、今のような多彩な発酵食が生まれていったのでしょうね。

こんなにある!世界中に存在する発酵食

さて、発酵食に日本独自の知恵や文化があるのと同じように、世界中の国や地域で、多種多様な発酵食が愛されています。ヨーロッパやアジア、アメリカなど、それぞれの土地の気候や風土によって育まれ、大切に受け継がれてきたものばかり。まさに発酵食=伝統食といっても過言ではありません。

日本でも認知度が高い発酵食としてチーズやヨーグルト、ピクルス、お酒のジンやラム、ウイスキーなどがありますよね。他にも興味深い発酵食品や調味料がたくさんあるんですよ。その一部をご紹介しますね!

ドイツ 【 ザワークラウト 】
キャベツを植物性乳酸菌で発酵させた漬け物。ソーセージなどの肉料理の付け合わせとしてよく使われます。発祥はドイツですが、今ではヨーロッパ各地で食べられているようです。

スウェーデン 【 シュールストレミング 】
ニシンの塩漬けを缶に入れて発酵させた保存食で、その強烈な匂いから「世界一臭い食べ物」と呼ばれているほど。缶の中でずっと発酵を続けるため、常温保存NG。本場スウェーデンでは、パンや茹でジャガイモと一緒に食べるのが一般的です。

ポルトガル 【 マッサ・デ・ピメント 】
赤パプリカの塩漬けを干してペースト状にした発酵調味料。「マッサ」と略して呼ばれることも。肉魚料理からパスタまで幅広く合わせやすいため、ポルトガルの伝統料理に欠かせない万能調味料として広く浸透しています。

イタリア 【 アンチョビ 】
イタリア料理でおなじみのアンチョビも発酵食。内臓を取り除いたカタクチイワシを塩漬けにして発酵させ、オリーブオイルを加えて作ります。発酵食品独特のうま味が特徴。

イギリス 【 マーマイト 】
日本ではあまり馴染みのないマーマイト。ビール製造時に出る酵母(ビールの酒粕)に塩を足し、少し砂糖を入れて味をマイルドにして煮詰めたもので、主に食パンにジャム感覚で塗って食べるのが定番です。癖のある香りと独特の苦味があるため、本場の人でも好き嫌いが分かれるんだとか。

ガーナ 【 スンバラ(ダワダワ) 】
豆を煮て発酵させた調味料。発祥のガーナだけでなく、西アフリカの家庭料理では欠かせない調味料として知られています。「アフリカ納豆」と呼ばれることも。

南アフリカ共和国 【 ルイボスティー 】
日本でもよく飲まれているルイボスティーは、南アフリカで自生しているルイボスというマメ科植物の葉を発酵して作る発酵茶。現地での歴史は長く、数世紀に渡って「奇跡のお茶」として飲み続けられてきたんだそう。

マダガスカル 【 バニラビーンズ 】
意外ですが、バニラアイスクリームに欠かせないバニラビーンズも発酵食。バニラの種子鞘を、発酵・乾燥を繰り返すキュアリングという方法でゆっくり発酵・熟成させて作られています。あの独特の香りは発酵パワーによって生み出されているのですね。

アメリカ 【 タバスコ 】
あまり知られていませんが、タバスコも発酵調味料。タバスコペッパーという唐辛子と塩をオーク樽で長期間発酵させ、さらにビネガーを混ぜて熟成させています。正式名称はタバスコソース。アメリカのマキルヘニー社という会社が商標権を持っており、そのレシピは門外不出なんだとか!

中国 【 酒醸(チューニャン) 】
もち米と米麹から作られる発酵調味料で、主に甘味料として使われます。風味などが日本の甘酒によく似ているといわれています。

【 豆板醤(トウバンジャン)・甜麺醤(テンメンジャン) 】
中華料理で定番の発酵調味料。豆板醤はそら豆に麹と塩水を加えて発酵させたもの。甜麺醤は、なんと小麦粉に麹を加え発酵させています。

フィリピン 【 ナタ・デ・ココ 】
90年代の日本で一大ブームとなったナタ・デ・ココは、ココナッツウォーターにナタ菌という酢酸菌の一種を加えて発酵させ、その液体表面の上澄みをダイス状にカットしたもの。ナタ・デ・ココは「ココナッツの上澄み皮膜」という意味なんだそう。

タイ 【 ナンプラー 】
タイ料理に欠かせない発酵調味料で、日本での認知度も高いですよね。塩漬けしたカタクチイワシを発酵させて生じる液体で、いわゆる魚醤です。発酵にかかる期間は1年ほど。味噌のように、作り手によって味わいに違いがあるのも特徴。


一気にたくさんご紹介しましたね!でも、これらは世界の発酵食のほんの一部。日頃よく食べているものもあれば、意外なもの、日本ではなかなかお目にかかる機会がないものまで、驚くほど多くの発酵食が存在しているのですね。

発酵の知恵は、人類の宝!

もともと偶然の産物から生まれたであろう発酵食ですが、食品の保存性を高めたり、味わいに深みが出たり、栄養価がアップしたりと、時代を追うごとに付加価値がどんどん増えていくのが魅力かもしれません。

まさに、世界中の食と健康を守ってきた歴史ある知恵。そんな奥深い発酵食の文化を、これからも目いっぱい楽しんでいきたいものですね。


参考: 
●高橋栄造編集(2018)『発酵のちから 快腸!がんも生活習慣病も、心配いらない』辰巳出版.
●女子栄養大学著(2021)『栄養と料理12月号』女子栄養大学出版部.
●高橋英造編(2018)『快腸!がんも生活習慣病も、心配いらない 発酵のちから』辰巳出版株式会社.
●食の未来が見えるウェブマガジン:料理王国,Journal>豆知識「こんなにある!世界の発酵食品」https://cuisine-kingdom.com/hakkou-food
●食品データ館,食材の知識・データ「世界の発酵食品の種類一覧【国別リスト】」 https://urahyoji.com/fermented-food-list/#toc15
●国立研究開発法人 科学技術振興機構,林清著「健康で豊かな食を支える発酵食品の新展開に期待」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/105/12/105_761/_pdf/-char/en