おなかを守る暮らし方 〜便秘のナゾにせまろう〜

生まれた瞬間からずっと続いている「お通じ」。日常の1コマすぎて、自分のお通じがどういう状態なのかを正しく把握するのって意外と難しいですよね。

実は、かなりの便秘大国である日本。便秘の症状を訴える人が約450万人にも達するといわれているんです。特に慢性的な便秘は治療が必要なほど深刻なケースにもつながります。

お通じは、自分の健康を映す鏡。お通じと向き合おうとした時に、「これって健康なお通じなのかな?」「もしかして便秘?」「そもそも便秘ってどんな状態?」といった疑問がわいてきます。

そこで今日は、便秘に関する基本から、健やかなお通じにつながる暮らし方などを一緒に学んでいきましょう!

便秘ってどんな状態を指すの?

よく「毎日お通じがないから便秘だ」と思っていらっしゃる方がいます。ですが、「何日でなかったら便秘」というハッキリした日数の定義はないのだそう。なので、3日に1回しか出なくても排便がスムーズであれば便秘ではなく、逆に毎日お通じがあったとしても、すっきり爽快に出ていなければ便秘である可能性も……。

便秘とは、医学的にいうと「本来、体の外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」を指すので、お通じの回数というよりは、お通じ自体が快適かどうかという点が判断基準になってくるのですね。

そもそも便秘の大きな原因は、「大腸の動き・働きが悪いこと」「便の材料が少ないこと」だと言われています。もちろん、大腸そのものに病気がある場合も考えられますが、まずはこの2つが要因として挙げられます。

もしかしたら「自分は便秘ではない」と思っていても、「医学的には便秘だった」という方もいらっしゃるかもしれません。自分のお通じがどんな状態か、客観的に知りたいですよね。そんな時、お通じが健康かどうかをチェックできる国際指標があるんですよ。

 

あなたの便は?国際指標と便秘症チェック

自分のお通じが健康かどうかを知るために、便の形状を判断材料にした世界的な指標があります。それがブリストル便形状スケール」というもの。

これは、1997年にイギリスのブリストル大学で提唱・開発された基準で、便の形や色に基づいて7段階に分類した指標です。便秘症の診断項目の一つとして医療現場で使用されています。あなたのお通じはどのタイプでしょうか?理想は4番の便です。ぜひチェックしてみましょう!

毎日排便があるとしても、指標の1や2のような形状のせいで強くいきまないと出なかったり、残便感があったり、うさぎのようなコロコロ硬便だったりするようなら、便秘の可能性があります。

最近の研究では、便秘は他のさまざまな病気のリスクを高めることが分かってきています。すっきり爽快なお通じのために、ぜひ日頃からできる対策をしたいですよね。その鍵は、生活習慣と食事。便秘は、生活スタイルを見直すことで対策ができるトラブルでもあるのです。

そこで、明日からできる「おなかを守る暮らし方・食べ方」をご紹介しますね。

お通じを改善したい!どうすればいい?<生活習慣

お通じをスムーズにしたい時に、すぐに取りかかれて効率のいい方法が「生活習慣の改善」です。慢性的な便秘は、まさに生活習慣病。今の生活スタイルを見直していくことがとても大切になってきます。

それでは、お通じのために改善すべき生活習慣とはどんなものでしょう?そのヒントは、自律神経を整えることにあります。

腸の動きは自律神経によってコントロールされています。リラックスしている時や睡眠中に優位になる副交感神経が働くと、腸の動きが活発になります。一方、ストレスや緊張を感じていると交感神経が優位になるため、腸の動きも鈍くなります。この自律神経を整えてくれるのが、適度な運動や質の高い睡眠です。また、小さな便意を我慢しすぎないことも大切。

そこで、はすやがオススメするのが「すぐに出来る4つの便秘対策」です!

① 1日10分でいいので、軽く運動をする

運動をした後は副交感神経が優位になり、ストレスが解消されて腸の動きが活発になります。また腸自体が動くことも便秘対策にとってプラス。運動不足で筋力(特に腹筋)が衰えていると、排便のときに押し出す力が弱くなり、便秘になりやすくなります。加齢によって便秘で悩む方が増えやすいのも、こうした筋力不足が影響しているといわれています。そこで、筋力アップにつながる筋トレやストレッチ、または全身運動になるウォーキング、踏み台昇降運動などがオススメです。

② 朝起きたらできるだけ食事や水分をとる

最近は朝食を食べないという人も増えているそうですが、これが便秘の一因になっている人も。人間が便意をもっとも感じやすいのは朝食の後。夜の間に休んでいた胃腸に食べ物や飲み物が入ると、それが刺激となって蠕動運動(腸が伸びたり縮んだりして排泄へと働きかける動き)が起こるからです。そのため、起床後に何も食べずにいると排泄を促すシステムがうまく機能せず、便意が起きなくなってしまうのです。どうしても食欲がないときは、コップ1杯の白湯を一気飲みするだけでも違いますよ。ぜひ意識してみましょう。

③ しっかりと睡眠をとる

私たちの体は、眠っている時に副交感神経が優位となり、腸の働きが活発になることが分かっています。このおかげで栄養の消化・吸収・便の排出が促されるため、睡眠時間が不足していたり、深く眠れなかったりすると生理機能のバランスが崩れて便秘になりやすくなります。腸内環境の悪化と自律神経の乱れを引き起こす不眠を少しでも解消することが、便秘対策につながります。質のいい睡眠をとるために、室温や明かり、布団や枕が自分に合っているかを見直す、眠る前にスマホやPCなどの液晶画面を見ない、眠る前に体をほぐすストレッチをするなど、快眠できる環境を整えてあげて。

④ トイレタイムを習慣化する

決まった時間にトイレに座ってみる、いわゆる「排便習慣」をつけましょう。便意があってもトイレに行かずに我慢する状況が続くと、便が硬くなって出にくくなる恐れも。トイレタイムをしっかり確保してあげることで、体が安心して排便へとつながりやすくなります。ただし、長居は禁物。便意がないときは無理にいきまず、便座に座るのも3分以内を目安にしましょう。オススメは、毎日の朝食後に設けるトイレタイム。便意の有無に関わらず「習慣にする」ことがポイントです。

お通じを改善したい!どうすればいい?<食事

もうひとつ、お通じ対策として不可欠なものが「食事の見直し」です。便は当然ながら、食べたものの残りカス。だから、きちんと食事を取っていないと便の材料が不足する事態となり、便秘が加速します。さらに最近は、糖質を制限するダイエットによって穀物から摂る食物繊維が減り、便秘になるケースが増えているそう。

食事内容はもちろんですが、食べ方や食事のリズムもお通じに大きく影響します。「便秘になりにくい4つの食事ポイント」をおさえて、健康的なお通じを目指しましょう!

① 3食のリズムを整える

<生活習慣>の項目でもお伝えしましたが、便は睡眠中に作られ、起きて飲食をすることで便意へとつながります。朝食→昼食→夕食の3食を規則正しく食べることで排便リズムが整いやすくなるので、できるだけ決まった時間に食べるようにしましょう。

② よく噛んで食べる

 食事はよく噛むことを心がけましょう。噛むことで副交感神経が優位に働き、腸の動きも活性化します。唾液もよく出るので消化が進みやすいのもメリット。早食いや、ながら食いは便秘のもとです。できれば一口30回ほどを目安に噛むといいですよ。

 ③食物繊維をしっかり摂る

腸の蠕動運動を活発にして、便がカチカチになるのを防ぐ「食物繊維」をしっかり摂りましょう。穀物、豆類、芋類、海藻類など、できるだけ多様な食材を食べることが理想です。食事ではなかなか十分に摂れないという方は、健康食品やサプリメントの活用もオススメです。

④ 水分をたっぷりとる

食事からの水分だけでは体内の水分量は十分に確保できません。便が硬くならないように水やカフェインが少ないお茶などをたっぷり飲むと◎。できれば、1日あたり1.2〜1.5Lほどの水分摂取が理想的です。カフェインが多い飲み物や利尿作用があるため、かえって体内の水分量が減ってしまうので要注意です。

お通じは秘め事じゃない!早めに対処を。

自分のお通じについて、なかなか相談できないというお声もよく聞きます。特に女性は、ダイエットやホルモンバランスなどの影響から便秘を起こしやすいものの、「体質だから」「恥ずかしいから」と便秘の悩みがあってもあまり訴えない人が多く、隠れ便秘で悩んでいる人が多いそうです。

ですが、お通じは全身の健康と美容に深く関わっており、特に慢性的な便秘症はれっきとした病気です。自己流で便秘薬に依存するのではなく、まずは生活習慣や食事の見直しを基本に、それでも改善しないときは病院などになるべく早くかかるようにしたいですね。

お通じは、あなたの健康バロメーター。ご紹介した対策はどれも手軽に始めやすいものばかりです。ぜひ実践してみてくださいね。


参考: 
●藤田紘一郎著(2015)『「腸にいいこと」だけをやりなさい!』毎日新聞出版.
●松本明子(著), 小林弘幸(監修)(2015)『腸をキレイにしたらたった3週間で体の不調がみるみる改善されて40年来の便秘にサヨナラできました! 』アスコム.
●フランク・ラポルト=アダムスキー(2020)「腸がすべて: 世界中で話題!アダムスキー式「最高の腸活」メソッド』東洋経済新報社.
●月刊誌『現代を健康に生きる 栄養と料理』(2021年12月号)女子栄養大学出版部.
●日本消化器病学会関連研究会「慢性便秘の診断・治療研究会: 慢性便秘症診療ガイドライン2017」(2017)
●日経メディカル, 外来診療クイックリファレンス「「慢性便秘症」https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/guideline/202205/575047.html
●ユニ・チャーム排泄ケア研究所,排泄ケアナビ「消化・吸収のメカニズム>ブリストルスケールによる便の性状分類」https://www.carenavi.jp/ja/jissen/ben_care/shouka/shouka_03.html
●厚生労働省,e-ヘルスネット「便秘と食習慣」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html