菌活に欠かせない「食物繊維」のヒミツ

健康づくりに欠かせない栄養素といえば、「食物繊維」ですよね。 

すでにさまざまなメディアや書籍で、食物繊維の大切さや健康情報がたくさん発信されている現代ですが、今回は改めて、菌活をする上での「食物繊維の基本」を皆さんと一緒に学んでいけたらと思います。 

さあ、さっそく始めましょう! 

食物繊維って一体なに? 

今でこそ、健康づくりに重要だと言われている「食物繊維」ですが、実はひと昔前まではあまり重視されていませんでした。その理由は、「食物繊維には栄養がない」「食べ物の残りカスだ」と考えられていたからなんです。今では信じられないですよね。 

食物繊維とは、「人の消化酵素で消化されない炭水化物」のこと。専門的に言えば、食べ物の中に含まれる「難消化性成分」を指します。消化酵素の影響を受けずに大腸まで運ばれることから、昔は「消化されないもの→活動エネルギーにならないもの」という位置づけだったのですね。 

その定義が、研究が進むにつれ少しずつ見直されだしました。食物繊維が消化されずにお腹を通って出てくることで、不要物を掃除してくれる役割があること、善玉菌のエサになることなど、多くの健康効果に関わっている事実が明らかになってきたからです。 

1970年代に入ると、食物繊維は「要らないもの」ではなく「不可欠なもの」として認知されるようになります。そして今では、「五大栄養素」(たんぱく質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラル)に加えて、食物繊維は「第六の栄養素」と言われるまでになりました。 

こうして、食物繊維の重要性が広く認知されるようになっていったのです。 

糖質+食物繊維=炭水化物! 

そんな「食物繊維」ですが、食品表示基準の分類では「炭水化物」に含まれます。炭水化物ときくと、普通は「糖質」を思い浮かべますよね。正確には、「糖質+食物繊維=炭水化物」なんです。 

食物繊維と糖質は、どちらも“糖”で構成されているので、同じような働きをするものなのかと思いきや、実は全く違います。 

まずは食物繊維。消化酵素で分解されないので体の中に吸収されることがありません。これは、活動エネルギー源にならないことを示しています。一方、糖質は私たちの体に消化吸収されて全身の細胞に届けられます。私たちの活動エネルギー源となるのですね。 

よく、「ダイエットを始めたら便秘になりやすくなった」というケースを耳にしますが、これはカロリーや糖質摂取量を控えたいあまりに、毎日の食事で炭水化物を極端に減らしすぎた結果、食物繊維不足に陥っていた……ということが多いようです。 

それでは、一日にどれくらいの食物繊維を摂取するのが理想なのでしょうか? 

私たちの体に食物繊維はどれくらい必要?不足すると? 

健康な生活を送る上で推奨されている食物繊維の摂取目安量は、一日あたり24g以上だそうですが、この量を摂るのはなかなか難しいところ。そこで、厚生労働省が「目標とすべき食物繊維の一日あたりの摂取量」を定めています。 

それが、成人男性なら21g以上、成人女性なら18g以上という量。 

これなら1食で6〜7gの食物繊維が摂れればいいのでクリアできそうと思ってしまいますよね。それが意外と大変なんです。 

例えば「5gの食物繊維を摂ろう!」と思った時、レタスなら1玉半(約450g)、バナナなら4本弱(約450g)、さつまいもならほぼ1本(約220g)、茹で蕎麦なら1食分(約180g)など、けっこうなボリュームが必要です。これを毎食クリアするのは、かなり大変。 

実際、厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」によると、日本人の一日あたりの食物繊維の摂取量は不足気味で、特に若い世代の摂取量が足りていないことが分かっています。 

食物繊維が不足すると、一番に思い浮かぶのは便秘ではないでしょうか。便の悩みだけでなく、おなか環境の悪化につながるため、生活習慣病のリスクも高くなると言われています。いつもの食事で食物繊維がきちんと補えているかどうか、日々意識したいものですね。 

食物繊維は2種類ある!どう違うの?  

そんな食物繊維は、2種類に分類されています。2つの違いは「水に溶けるか、溶けないか」というもの。一つずつ、特徴を見ていきましょう。 

① 不溶性食物繊維(水に溶けない) 

水に溶けにくい特徴がある「不溶性食物繊維」は、水分を吸収しておなかの中で膨らむ特性があります。体積が増えることで腸内を刺激し、ぜんどう運動を促してくれるため、お通じのサポートにも活躍します。豆類やキノコ類、ゴボウやレンコン、かぼちゃや芋などの野菜類、玄米などの穀類、エビやカニの殻にも含まれています。 

② 水溶性食物繊維(水に溶ける) 

「水溶性食物繊維」は、文字通り水に溶けやすく、水分を含むとゲル状に変化するため粘着性があります。おかげで、おなかの中をゆっくり移動して消化速度を遅くしたり、有害物質を排出する働きがあります。また、血糖の吸収をゆるやかにし、コレステロールの排出にも影響しているため、上手に摂ればダイエットの心強い味方に。海藻やこんにゃく芋、オクラや納豆などに含まれています。 

この2つの食物繊維はそれぞれ違う働きをするので、おなか環境のためにもバランスよく摂りたいもの。どちらかに偏りすぎず、上手に組み合わせながら食事に取り入れていきましょうね。

菌活においての食物繊維 

食物繊維の働きや特徴について色々と見てきましたが、その中でも特に重要な役割のひとつとして、「腸内細菌のエサになること」を忘れてはいけません。実は腸内に存在する善玉菌は炭水化物が好物。そのため、消化されずに大腸まで届く食物繊維は善玉菌にとって絶好のエサになり、細菌数も増えるという好循環となります。特に、腸内細菌が食物繊維を食べることで「短鎖脂肪酸」という酸が増えると、酸性環境を嫌う悪玉菌が増えにくくなるというメリットがあるんです。食物繊維の摂取は、おなか環境を健やかに保つことにつながるのですね!

あなたのおなかは今、食物繊維が足りていますか?いつもの食事を少し見直して、ぜひ、食物繊維のチカラを健康づくりに役立てましょう! 


参考: 
●牧野直子(監修), 松本麻希著(2016)『世界一やさしい! 栄養素図鑑』新星出版社. 
●キューピー,「野菜で腸活!サラダで腸活!」 
https://www.kewpie.co.jp/choukatsu/
●文部科学省,食品成分データベース,「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
●厚生労働省,e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」, 
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
●厚生労働省,「炭水化物」, 
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586559.pdf