「美しい肌」と聞くと、どんな肌を思い浮かべますか?
みずみずしい肌、ハリのある肌、キメの整った肌などさまざまありますが、すべてに共通するのは「健やかな状態であること」ではないでしょうか。
肌を健やかに保つため、毎日のスキンケアに余念がないという方も多いかと思います。その際、忘れてはならないのが「菌活」です。「え?菌活って腸内環境を整える健康習慣でしょ?」と思われがちですが、実は、スキンケアにおいても非常に大切なんです。
一体、菌活とスキンケアにどんな関係があるのでしょうか?ぜひ一緒に学びましょう!
肌にも菌がいる!「常在菌」ってなに?
私たちの体は、多くの菌と共存していることをご存知ですか。腸内はもちろん、消化器や泌尿器、口や鼻の中、頭髪や肌表面など、あらゆるところに「常在菌」と呼ばれる細菌が存在しています。
この常在菌の種類は、個人差もありますが1000種類近くにのぼるといわれています。凄い数ですよね。もともと人間は無菌の状態で誕生しますが、母親や周囲の環境から細菌をもらって、成長と共に少しずつ体内で増やしていきます。その過程は千差万別で、 DNAや指紋のように「同じ菌を持つ人はこの世にいない」といわれるほど。しかも、すべての細菌が解明されているわけではなく、今も新しい菌が発見され続けているというのだから興味深いですよね。
この常在菌のひとつである「皮膚常在菌」という肌表面の菌が、肌のコンディションに大きく関わっていることが分かってきたのです。
この皮膚常在菌には、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つの種類があります。「善玉菌」は肌にとって良い働きをする菌、「悪玉菌」は肌トラブルを引き起こす原因となる菌、そして「日和見菌」は善玉菌と悪玉菌のバランスによって良くも悪くもなる菌。そう、腸内環境と同じような組み合わせなんですね。
この3つの菌のバランスが崩れたり、悪玉菌が増えすぎたりすると肌トラブルを招きやすくなるというのです。スキンケア業界では、皮膚常在菌、特に善玉菌のことを「美肌菌」と呼ぶほど、健やかな肌に欠かせない存在として位置づけられています。
3つの菌をくわしくみてみましょう。
【善玉菌(美肌菌)】
肌にとって良い働きをする菌のこと。代表的なものに「表皮ブドウ球菌」や「真菌(マラセチア菌)」などがあります。肌表面に潤いを保つグリセリンを作ったり、外部からの刺激から守ってくれたりする働きがあります。肌の表皮近くにいる菌なので、洗い落としすぎると菌バランスが崩れる一因にも。
【悪玉菌】
肌トラブルを引き起こす要因となる菌のこと。通常は無害ですが、善玉菌が少なくなると増加して毒素を作り出すため、肌荒れやかゆみ、肌の赤みや乾燥につながるとされています。代表的な菌に「黄色ブドウ球菌」などがあります。この菌は傷が膿む原因となったり、乾燥を引き起こしたりする特徴があります。
【日和見菌】
善玉菌と悪玉菌のバランスに左右される菌。代表的なものとして、「アクネ桿菌(かんきん)」などがあります。アクネ桿菌は、普段こそ保湿機能を高める美肌菌に近い働きをしてくれるのですが、ストレスなどで皮脂バランスが崩れると脂肪分の多い場所に定着し、ニキビの原因になることで知られています。
前述でご紹介した代表的な菌以外にも、肌には何十種類もの常在菌がいて、それぞれ役割や性質をもってバランスを保っているんですね。むしろ常在菌がいるからこそ、肌の健康が保たれているというのが美容業界では常識となっています。こうして皮膚常在菌を知れば知るほど、スキンケアにも「菌活的視点」が必要なことがお分かりいただけるかと思います。
常在菌バランスが崩れるとどうなるの?
目には見えない皮膚常在菌。実際にバランスが崩れるとどんなトラブルが起きるのかは、いまいち実感がわきませんよね。
大きなトラブルとして挙げられるのが、肌のバリア機能低下です。バリア機能には、肌の保水力を高めたり、外的刺激から守ってくれたりする重要な役割があるのですが、善玉菌が少なくなると肌は弱酸性からアルカリ性へと傾いてしまい、悪玉菌が繁殖しやすい環境が加速。その結果、バリア機能が低下して肌トラブルが起きやすい環境に陥ってしまうことが分かっています。バリア機能がきちんと働いていない肌は、保水力が弱くなり、その結果、透明感やハリにも大きな影響が出てしまいます。
ちなみに、大手化粧品メーカーの研究によると、敏感肌の人ほど皮膚常在菌の多様性が低く、善玉菌も少ないことが分かったというのです。そこで、善玉菌を増やすプレバイオティクス成分が入ったスキンケアアイテムを敏感肌の人に使ってもらったところ、ほぼ全員の肌において水分量が回復し、肌のキメも改善したという結果が出たんだそう。常在菌のバランスを整えることが、美肌への近道だといえますね!
常在菌バランスのために気をつけたい5つの習慣
常在菌バランスの大切さはよく分かったものの、日頃どんなライフスタイルやスキンケアをすればいいのか難しいですよね。実は、やるべきことは意外とシンプルなんです。
ポイントは5つ。どれもちょっとした意識の持ち方でできることばかりなので、ぜひ生活習慣として取り入れてみてくださいね。
【乾燥に気をつける】
常在菌バランスにとって大敵なのが、乾燥です。特に肌の善玉菌は水分がないと生息できなくってしまうため要注意です。スキンケアによる保湿に加え、エアコンなどによる空気の乾燥にも気を配るようにしましょう。
【過剰な洗顔はしない】
清潔に保ちたいと日に何度も洗顔をする方がいますが、常在菌をどんどん減らしてバランスが崩れる原因になり、乾燥が加速します。洗顔料を使った洗顔は朝晩1回ずつくらいでOK。また、洗浄力の強い界面活性剤や防腐剤を含んだ洗顔料もできれば避けましょう。
【汗を流す】
善玉菌のひとつである「表皮ブドウ球菌」は、皮脂を材料に成長します。そのため、適度に汗を流さないと、なかなか菌が育たないという状況に。新陳代謝の乱れをケアするためにも、汗を流すことはとても効果的。適度な運動などで意図的に汗をかくようにするのがポイントです。
【栄養を摂る】
腸内の菌と同じく、肌の菌にもさまざまな栄養素が不可欠です。特に取り入れたいのが、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクス素材が含まれた食品や、ヨーグルトや納豆など有用菌が含まれるプロバイオティクス食品です。さまざまな食材をバランスよく食べるように心がけたいですね。
【しっかり眠る】
睡眠不足は、肌の新陳代謝が崩れやすくなる原因となります。代謝の乱れは常在菌バランスの乱れに直結するため、熟睡できるような睡眠環境を整えてあげてくださいね。
どの生活習慣も、共通するのは「良い菌を育てる=育菌」が目的だということ。肌の常在菌がどうすれば整うのか、おなかの菌活と同じ感覚でスキンケアを見直してみるのもいいですね。
常在菌をバランスよく育てる「育菌習慣」を
健やかで美しい肌は、日常生活でのちょっとした「育菌」の積み重ねによってつくられています。そして、「体の内側から健康を整える菌活や腸活」と、「体の外側から考える菌活スキンケア」は共通点がとても多いことから、美容と健康はつながっていることを改めて実感します。
あなたの理想とする美肌を目指すために、ぜひこの機会に今のお手入れ習慣や生活習慣を見つめ直してみてくださいね。
参考:
●小林暁子(著)(2018)『医者が教える最高の美肌術』アスコム.
●青木皐(著)(2006)『菌子ちゃんの美人法』WAVE出版.
●永松麻美(著), 櫻井直樹(監修)(2021)『正しい知識がわかる 美肌事典』高橋書店.
●川上愛子(著)(2019)『皮膚常在菌ビューティ! (美人開花シリーズ)』ワニブックス.
●資生堂,ニュースリリース「資生堂、敏感肌では皮膚常在菌叢の多様性が低いことを発見」https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002960
●資生堂,D-program「教えて!美肌菌の秘密」https://www.shiseido.co.jp/dp/bihada_lp/
●クラシエ,Kampoful Life「美肌を育む「育菌スキンケア」とは?今日からできる育菌スキンケア法」https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/beauty/?p=2271
●ハウス食品,fromハウス「腸内環境を整えて美肌菌を守ることが素肌美人への近道!」https://comeon-house.jp/fromhouse/02/index.html